第26回青井中美展
2019年11月14日(木)― 12月1日(日)
第26回青井中美展の開催にあたって
富山県立高岡工芸高等学校 校長 六家敬吉
このたび、第26回青井中学生美術展(青井中美展)を実施しましたところ、県内37校の中学校から426点の応募を頂き、誠に有難うございました。今年も、絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から、若い感性の秀作作品238点が入選・入賞し、青井記念館美術館に展示する運びとなりました。
この青井中美展は、県内の中学生を対象として、本校創立100周年を記念して開催され四半世紀を超える展覧会となっております。今年も、中学生諸君が制作した意欲あふれる美術工芸作品を、本校出身の第一線でご活躍の作家・デザイナーの各先生に鑑審査を頂きました。入選・入賞された方には、お祝いを申し上げますとともに、本美術展を契機としてより一層創作意欲を高め、作品制作に励んで頂きたいと存じます。
さて、本校は明治27年に「富山県工芸高校」として、若き美術家・工芸家の養成学校として開校され、日本有数の美術系学校として全国に知られていました。卒業生の中から、芸術院会員や重要無形文化財保持者(人間国宝)など日本を代表する優れた芸術家が多く輩出されています。このような由緒ある地で、県内の中学生を対象とした美術展を開催し、優秀作品を一同に展示することは大変意義のあることであり、作品内容も大変に充実していることは主催者として誠に喜ばしいかぎりです。
おわりに、審査にあたられました先生方をはじめ、これまで生徒の指導に当たってこられました先生並びに企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼申し上げます。
第26回青井中美展 青井大賞
「未来」
戸出中学校3年 清都 加菜里
青井中美展審査評
絵画部門 佐野正人・大村雅章・上杉靖吾
高い描画力を発揮しているが、規格外のために賞候補から漏れてしまう作品もあり残念であった。また、ビニールがかけてあって絵画的な質感が損なわれてしまっている作品もあり、規格サイズの順守とともに、よく考えていただきたい。今回出品数は184点、入賞・入選作品は85点と例年より作品が少ない印象であったが、油絵、水彩、切り絵など、多様な表現への挑戦が見られた。全体的に具象的な作品が多く、よく時間をかけて描かれた努力作が入賞作品となった。
富山県知事賞「冥と輝」 甲谷 啓人
モノクロームで描かれたシンプルな表現であるが、生命の尊さを訴えかける作品である。紙の質感を全く感じさせないほどに擦りこまれたカーボンの背景は、グレーの色調が美しく、魚の骨の色や質感を効果的に引き出している。時間と労力がかかった作品である。
優秀賞「ごっこあそび」 嶽本 和奏
題名が示すとおり、幼子が段ボール箱の中に入って遊んでいる微笑ましい一コマである。表情豊かで、生き生きしており、細部まで丁寧に描かれている点に好感がもてる。
チューリップテレビ優秀賞「故郷の庭で」 フェルナンデス アイカズミ
油絵で描かれた風景は、一目見てわかるとおり日本の風景ではない。作者の故郷を思い出しながら集中して描いている姿やその思いが伝わる、写実表現力に優れており、水面に映る光の明暗が美しい。
富山新聞社優良賞「彫刻家の集う町」 辻井 大志
構図に優れており、時間をかけて見えるもの一つ一つを丁寧に描いてある。
彫刻・工芸部門 竹田貞朗・般若保・鈴木甲一郎
応募数は136点で、入選作は87点となり、例年より作品数が少ないようであったが、大きな作品が目立った。身近な材料を工夫しての作品が目についた。
青井大賞「未来」 清都 加菜里
女の子上半身像をプラスチック素材で表現した作品である。人物彫刻の基本である顔の表情、手の骨組みなどがよく観察して表現され、力強く中学生らしい若さが感じられ、力作である。
優秀賞「再び」 村中 陸人
段ボールを利用し、大きい人体をよくまとめた全身像である。粘土などの材料で出来た作品に負け劣らない、見ていて楽しさ、リズム感が感じられる作品である。
優秀賞「かたむいたとう」 犀川 晴太
色々と形状の違う木片を自由にまとめあげ、着色をほどこした抽象作品である。リズム、バランス、動きなど見る人に楽しさを与える作品である。
デザイン部門 玉井晶夫・佐藤克己
今年のデザイン部門の出品数は106点。過去数年の中では最小であったが、入選率は62.3%の66点となり、秀作が揃い、各部門の中では出品作品の多くを入選とすることになった。入選、入賞された作品は、学校の授業で作られた作品は少なく、クラブや家庭で時間を掛けて制作されたものが多く感じられ、大型作品も年々増えてきている。
中学生らしい若い感性で、テーマに対する的確な表現とパワーに心を奪われる作品に目を引かれる。だが、男子生徒の出品作品が少なく、意欲の高まりを男子生徒にも期待したい。また、絵画部門でありながらデザイン部門に出品すれば入賞できるような表現豊かな作品があり、出品部門を選ぶことも重要なポイントだと考える。
富山県教育委員会教育長賞「blanco」 藤川 白麗
人種差別を描いたのだろうか?blancoはスペイン語で「白」のことである。画面いっぱいに1人の人物を描いている作品は2年間続けて出品しており、驚きを感じるとともに、一歩前進している画面に感動をおぼえる。大胆ながら、人を惹きつけるエネルギーにエールを送りたい。
最優秀賞「動物壁画」 南 葉月
作者の動物に対する愛情を感じる大作。色々な動物や描き方の手法は様々で、極めて根気がいる作品。この細かさが作品の個性にもなっている。もう少し細かな描写がすみずみまで行き届いていれば、より素晴らしい作品になっていただろう。
第26回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 「冥と輝」 蟹谷中学校3年 甲谷 啓人 |
富山県教育委員会教育長賞 「blanco」 出町中学校3年 藤川 百麗 |
最優秀賞 「動物壁画」 芳野中学校3年 南 葉月
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優秀賞 「ごっこあそび」 出町中学校3年 嶽本 和奏 |
富山新聞社優秀賞 「再び」 出町中学校3年 村中 陸人 |
チューリップテレビ優秀賞 「故郷の庭で」 新湊南部中学校3年 フェルナンデス アイカズミ |
審査会
11月2日(土) 尚美会館
表彰式
11月14日(木) 尚美会館 15:00~
講評会
11月14日(木) 青井記念館美術館 15:55~