2011年11月17日~12月4日
富山県立高岡工芸高等学校長 池田 尚紀
このたび、第18回青井中美展コンクールを実施しましたところ、県内51校の中学校や特別支援学校から734点の応募がありました。絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から優れた作品26点を表彰し、入賞・入選作品計362点を美術館に展示いたしました。若い感性で、見る者に伝える強いメッセージとパワーを感じる秀作がそろっておりました。
さて、この青井中美展は本校100周年記念事業の一環として、青井記念館が現在地に新築移転となった機会に発足いたしました。県下の中学生を対象に、美術工芸作品コンクールを開催して、若き中学生の創作意欲を促し、絵画・工芸に親しむ機会を設け、さらには郷土の芸術家にも関心を抱いてもらおうとしたものです。
本校の創立は明治27年に「富山県工芸学校」として、若き美術家・工芸士の養成学校として開校されました。創校当時の学校は、一流の指導者、日本一の施設設備、そして近郷近在から集まってくる優秀な学生と三拍子揃った日本有数の美術系学校として全国に知られていました。卒業生の中からは、日本を代表する優れた芸術家が数多く輩出されています。
このような由緒ある地で、県下中学生の優秀作品を一同に展示することは大変意義のあることであり、各部門の応募数も多く、作品内容も充実していることは主催者として誠に喜ばしいかぎりです。 おわりに、審査にあたられました先生方をはじめ、これまで生徒指導に当たってこられました中学生の先生方及び4月から企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼を申し上げます。
第18回青井中美展 青井大賞
「ピラミッド」
西川 潤 砺波市立庄川中学校2年
青井中美展審査評
絵画部門
頭川 徹・佐野正人・大門俊彦
応募数319点の内、入選数160点、入選率50%であった。
絵画部門では、特に際立って目を引く作品が少なく、一般的な絵画作品というより、デザイン的な傾向の強い作品が多かった。故に選考に際し、判断に迷ったのが本音であった。また、描きこみや追及に乏しく、重量感に欠ける作品が多いように感じられた点も残念であった。
・教育長賞 「小さな踏切」 古野茉由
写実力に優れ、現場で受けた印象や感動が素直に表現されている。特に、近景の構成がおもしろい。さらに描きこめばもっと味わいのある作品になったと惜しまれる。
・優秀作品 「美術室」 堀川千香子
美術室のさちげない一隅を、明るくさわやかに楽しくとらえた作品である。特に、雑然としたロッカーや洗面所の小道具にポイントをおき、ユーモラスに表現しているところに作者の気持ちが伝わってくる。
・チューリップテレビ優秀賞 「心象風景」 長谷川彩花
想像力に優れ、夢のある情景を画面いっぱいに描き出している。構成と色彩がよく、また技法も工夫されており作者独自の個性に溢れている。この感性を大切にして伸びていって欲しい。
彫刻・工芸部門
竹田 貞郎・般若 保・佐伯 高基
ここ数年の中では応募総数177点と多く、入選も87点となり質の高い力作が多く見られた。
・青井大賞 「ピラミッド」 西川潤
梱包用のクッション材に使う発泡樹脂を張り合わせ組み立てた作品であるが、構成や色調がおもしろく、古代ピラミッドを彷彿とさせる力強く迫力のある見事な作品である。
・最優秀賞 「放課後の制服」 吉田美和
昨年の佳作に続いての受賞である。さりげなくハンガーに懸けられた愛着のこもったセーラー服を紙粘土で写実的に表現している。日常のひとこまにやさしく目を向けた視点がおもしろい。
・優良賞 「ZOO」 真岸瞳
銅板の打ち出し技法により、象を浮き彫りにした数少ない金工作品である。技術的にまだ未熟な点はあるが、丹念に造っている。美術教育の中で取り上げて欲しい題材である。
・チューリップテレビ優良賞「White Tower」 芳崎大弥
昨年の絵画部門で同賞を受賞。今年は、画用紙を精密に切り組み合わせた立体作品であるが、複雑な形状を細部に至るまで細かく、ねばり強く制作した秀作である。
デザイン部門
玉井 晶夫・柴田 秀紀・佐藤 克己
例年に比べると、平面デザインだけでなく、立体や手法を変えた作品が入賞に加わった。創造的で意欲的な作品を見ると、指導された先生のデザイン教育の成果が見てとれる。ただ、基礎的構成作品の出品が多い割には、強いインパクトを受ける作品が少なかったことが惜しまれる。
・富山県知事賞「孵化」 松浦明季
基礎デザインを学んだ上で、それを高度化し、しかも細部に渡って描かれた大作で大賞候補であった。ただ、孵化する卵の表現に幾分訴求力が不足し大賞を逃したしまった。
・富山新聞者優秀賞 「I・愛・哀?」 谷﨑優香
両面に流れをつくり、作者の意図が明快にでている。これを切り絵で繊密に表現した根気強さを評価したい。より大きな画面での制作であれば、もっと上位にいける作品であった。
・優良賞 「現在」 上森理道
自画像であろうか。素材に楊枝を使った現代的な立体作品。角度を変えて見ると動きが楽しい。
・優良賞 「noon」 稲垣羽乃
CDジャケットを手がけている永井博風の手法で、昼さがりのイラストレーションを描いた細密な模写が巧みである。
第18回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 |
富山県教育委員会教育長賞 |
最優秀賞 |
優秀賞 |
富山新聞社優秀賞 |
チューリップテレビ優秀賞 |