2010年11月17日~12月5日
富山県立高岡工芸高等学校長 池田 満
この青井中美展は、本校100周年記念事業で、青井記念館が現在の地に新築移転されたことを機に、県下の中学生の創作意欲を高め、絵画や工芸に親しむ機会を設けようと始められたもので、今年で17回目を迎えます。
今年は、県内51の学校から644点の応募があり、このうち、絵画、デザイン、彫刻、工芸の各分野から優れた作品24点を表彰し、他の入選作品とともに本校の青井記念館美術館に展示いたしました。
今年の作品には、ただ上手なだけではなく、見る者に強い印象を与えるものや、若者らしい力強さを感じさせるもの、時間をかけて丁寧に制作したものなどがたくさんあり、審査の先生方を大変喜ばせました。また、鋭い感性を感じさせる作品や親しい表現方法にチャレンジした作品など、将来の可能性を感じさせる作品も数多く見受けられました。これは、これまで熱心に指導にあたってこられた中学校の先生方のおかげであり、保護者の皆様のご支援の賜であると、大変ありがたく思っております。
本校は、明治27年に「富山県工芸学校」として、美術家や工芸士を養成するために開校されました。当時の学校は、一流の指導者、一流の設備、そして県下一円から集まった優秀な学生と、三拍子そろった日本でも有数の美術工芸学校でありました。卒業生の中からは、日本を代表する優れた芸術家が数多く輩出されており、それらの方々の作品が青井記念館美術館には数多く残されております。このような歴史的背景を考えてみますと、この青井記念館美術館に県下の中学生の優れた作品を一堂に集めて展示することは大変意義深いことであり、ひとりでも多くの中学生の皆さんに出品していただきたいと思っております。
おわりに、審査にあたられました先生方をはじめ、4月から企画運営にご尽力いただきました関係者の皆様方に厚くお礼を申し上げましてご挨拶といたします。
第17回青井中美展 青井大賞
「景色」
中谷 藍 高岡西部中学校2年
青井中美展審査評
絵画部門
頭川 徹・本保由喜美・大門俊彦
応募点数285点、入選作品156点は、昨年並みで推移した、特に今年は全般的に見て飛び抜た作品は少なかったが、バラエティに富み、明るい色彩とユニークな作品が多く見られた。しかし、色調の描き込みやや乏しく、重量感に欠けているように感じられ、残念に思われた。
青井大賞「景色」中谷藍。まず絵として取り上げにくい場所を独特の視点でとらえた構図が良く、しかも水面の描写が素晴らしい。実景以上の効果が出ており、近年にない完成度の高い作品である。
最優秀賞「孤独」清水奏子。猫の目と顔が強い印象を与え、背景に青で描かれた町の雑踏が、もの悲しさと鋭さの混在した猫の表情を浮き出させ、厳しい孤独感を伝えてくる作品となっている。
優秀賞「秋の実り」土田麗奈。爽やかで透き通った空気の中で、リンゴの色が瑞々しく美しい。思わずもぎ取りたい衝動に駆られるような作品である。
富山新聞社優良賞「フルーツと青き静物」橋爪佑実。器の青い色がすがすがしく描かれており、作品全体に透明感を与えている秀作である。
チューリップテレビ優良賞「触手」芳崎大弥。独特の発想でじっくりと根気よく描きあげている。緻密な表現力が素晴らしい作品を生んでいる。このような手法を考える柔らかい感性を大事にしてほしい。
彫刻・工芸部門
竹田 貞郎・般若 保・佐伯 高基
今年は、工芸部門の作品が少ないようであった。しかし、彫刻・工芸両部門とも質は全般的に向上しており、中には、迫力ある作品も見られ、次年度に期待が持たれる。
富山県知事賞「土曜日のカバン」高田花梨。日常生活での身近な題材を取り上げ、対象をよく観察し、写実的に創り上げている。紙粘土の材質感が生かされたこの作品からは、カバンの持つ暖かさやぬくもりが感じられ、造形の楽しさ・喜びが感じられる素晴らしい作品である。
優良賞「指きり」木村夏希。指きりをしている手の形が正確に把握されており、細やかな部分にも細心の注意を払いながら、丁寧に作られている。彫塑の基本をよく踏まえた力作である。
優良賞「鳥」藤井大誠。本格的な陶芸の作品である。モチーフは白鳥であろうが、単純化されたフォルムからは、堂々たる雄雄しさが伝わってくる。釉薬の発色も見事である。
富山新聞社優良賞「僅かなる希望」櫻井杏純。木端を組み合わせ、人差し指が支える透明な四角錐からは、非常に不安定な未来が感じられる。しかし、腕の周囲に配置された現代科学の象徴物が、ヒトが自身のうちに秘めている生命力の大きさ強さをも感じさせるのである。作品の力強さからは、生活の豊かさをも感じられる秀作となっている。本作者は昨年度優良賞に引き続いての受賞である。
デザイン部門
玉井 晶夫・柴田 秀紀・佐藤 克己
今年、デザイン部門の出品数は256点。そのうち入選が140点に絞り込まれた。さらに、絵画、彫刻、工芸部門を加えた中で、入賞作品を選ぶという、高いハードルがいくつもあり、非常に厳しい審査会となった。
デザイン部門の各作品は、授業や部活動に懸命に取りこむ中で生まれた、若い感性にあふれる作品が多いように感じられた。
その中で、教育長賞を受賞した金森由起子さんの「夢」が、デザイン部門のトップとなった。女性らしい感性と優しくて洗練された色づかい、緻密な表現と仕上がりが群を抜いており、細やかさと巧みさが目を引くすばらしい作品であった。
黒田あゆみさんの「夢金魚」は、金魚すくいを上からの目線で捉えた構成が良く、イラストの金魚も鮮やかに表現されている。
坂口遙さんの「FREE」は、基礎デザインを学びながら一歩上級のレベルを目指した秀作。 受賞作品からは、すべて豊かな感性と創作努力がひしひしと伝わってくる。バトミントンをテーマにしたポスターが、後一歩というところで入賞とはならなかった事が、今回の作品のレベルいかに拮抗していたかを伺わせることとして印象に残っている。
第17回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 |
富山県教育委員会教育長賞 |
最優秀賞 |
優秀賞 |
富山新聞社優秀賞 |
チューリップテレビ優秀賞 |