2009年11月18日~12月6日
富山県立高岡工芸高等学校長 池田 満
このたび、第16回青井中美展コンクールを実施しましたところ、県内50校から637点の応募がありました。このうち、絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から優れた作品26点を表彰し、他の入選作品と共に本校の青井記念館美術館に展示いたしました。若い感性で、ただ上手に創作するだけでなく、見る者に伝える強いメッセージをおくる作品や若者らしいパワーを感じさせる作品がそろっており、審査員を喜ばせました。
さて、この青井中美展は本校100周年記念事業で、青井美術館が現在地に新築移転となった機に県下の中学生に、絵画・工芸に親しむ機会を設け、創作意欲を刺激し、さらには郷土の芸術家にも関心を抱いてもらおうという趣旨で始められたものです。
本校の創立は明治27年、「富山県工芸学校」として、若き美術家・工芸士の養成学校として開校されました。当時の学校は、一流の指導者、日本一の施設設備、そして近郷近在から集まってくる優秀な学生と三拍子揃った日本有数の美術系学校として全国に知られていました。卒業生の中から、日本を代表する芸術家が多く輩出されています。
このような歴史を背景として、県下中学生の絵画・デザイン・彫刻・工芸の各部門の優れた作品を一堂に展示することは大変意義のあることであり、主催者として誠に喜ばしいかぎりです。
おわりに、これまで生徒の指導にあたってこられました中学校の先生方、4月から企画運営にご尽力いただきました皆様方、審査にあたられました皆様方など関係の皆様に厚くお礼申し上げ、ご挨拶といたします。
第16回青井中美展 青井大賞
「機動」
松下侑里香 大門中学校3年
青井中美展審査評
絵画部門
頭川 徹・本保由喜美・大門俊彦
今年度の出品点数282点の内、入選率は55%であった。飛びぬけて印象強い作品はなかったが、全体としてレベルが高く、爽やかな色彩効果と画面構成に工夫が感じられる作品が数多く見られた。
知事賞「NIGHT ZOO」圓佛和司。個性的な色づかいと、創造性豊かな形にとらわれない表現が、童心に帰った楽しい幻想の世界に引きこむユニークな作品である。
優秀賞「機械室」藤田由紀枝。意外なテーマを対象にとらえ、ダイナミックで力強い動きを入れた画面構成が素晴らしい。
チューリップテレビ優秀賞「先生」紅井里緒菜。真剣に仕事をしているまなざしや、机の上の様子が画面いっぱいにうまく構成された労作である。
富山新聞社優良賞「夏」今泉美玲。脇き上る噴水の一瞬をとらえ、本来不定形な水を造形的に表現しているところにユニークで意外性が感じられる。
その他、チューリップテレビ優良賞「小さくなったシューズ」武内由佳。布の上に置かれたシューズが細やかな感性で緻密に描かれ、全体の色調もさわやかな印象を与える完成度の高い作品である。
佳作「朝ぼらけ」一原愛。陽光に照らされた雲が美しい。この朝日を見た感動がよく表現されており、見る人の心を和ませる作品である。ただ惜しまれるのは、サインが大きく絵の美しさをやや損ねていたのが残念であった。
彫刻・工芸部門
大角 勲・竹田 貞郎・佐伯 高基
今年も中学生の若い力ではち切れんばかりの作品が期待したが、やや小品が多かったようである。しかし、現代っ子の新しい感覚で、自分自身を見つめた前向きな制作への姿勢が強く感じられる作品も多かった。
教育長賞「彫刻」加賀見智子「この手に掴むもの。」粘土で手首を表現した小品であるが、彫刻の基礎、デッサン、バランス、動き、質感などが丁寧に観察され、大変良く作られている。手の形や着色を美しくまとめ、暖かさ、作る喜び、楽しさが見る人を引きつける素晴らしい作品となっている。
富山新聞社優秀賞「工芸」村中翔紀「化石の魚」。スチロールと紙粘土を使い、薄肉に魚を浮き彫りで表現している。作品にあたる光の変化により、レリーフであるが、立体感が強く表現され、着色もテーマにふさわしい色調でまとめあげ、人なつっこさを感じさせる作品に仕上げている。
優良賞「彫刻」櫻井杏純「食事の準備」。軽い材料の紙粘土で、カボチャを切った時の切り口や、なかの種などの様子を細かく観察して表現している。思慕くな食材に向ける作者のやさしい愛情といったものが、ほのぼのと見る者に伝わってくる作品である
デザイン部門
玉井 晶夫・城宝 清司・太田 広信
過去数年のデザイン部門の応募数をみると、今年は昨年より50数点少ない138点でしたが、入選率は55%とやや高くなりました。ただ、この応募作品は各学校で選抜されたものであり、レベルの高い審査となりました。少数でも県下全般から広く出品されたこともあり、多様なテーマが取り上げられており、技術的にも優れた作品が多いように感じられました。
今年はデザイン部門から青井大賞が選ばれました。青井大賞の松下侑里香さんの作品「機動」は、中学校のデザイン教育でよく見かける基礎構成、等角技法をじっくり学び、さらに遠近法を取り入れた中に、具象化した手の指を部分的に構成するなど大型作品でした。基礎技法をより進化させたこの秀作をみると、地道な努力と工夫が求めるデザイン教育が成果となって表れており、これに応えた作者のセンスと意気込みが感じられます。
最優秀賞の出合由美花さんの「蜂」は、背景部分が染めであろうが、テクニックが群を抜いており、丹念にかかれたイラストもほほえましく感じられました。
入賞された方の作品はどれも好感が持て、今後更に努力されて上位を目指したほしいと思います。
第16回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 |
富山県教育委員会教育長賞 |
最優秀賞 |
優秀賞 |
富山新聞社優秀賞 |
チューリップテレビ優秀賞 |