2015年11月12日(木)~11月29日(日)
第22回青井中美展の開催にあたって
富山県立高岡工芸高等学校 校長 菊池政則
このたび、第22回青井中美展コンクールを実施しましたところ、県内41校の中学校や特別支援学校から511点の応募がありました。絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から優れた作品258点を表彰し、青井記念館美術館に展示いたしました。若い感性で、見る者に伝える強いメッセージとパワーを感じる秀作がそろっていました。
さて、この青井中美展コンクールは本校創立100周年記念事業で、青井記念館が現在地に新築移転となった機会に発足したもので、県内の中学生を対象に美術工芸作品コンクールを開催して、若き中学生の創作意欲を促し、絵画・工芸に親しむ機会を設け、さらに郷土の芸術家にも関心を抱いてもらおうと企画されたものです。
本校は明治27年に「富山県工芸学校」として、若き美術家・工芸士の養成学校として開校されました。創校当時の学校は、一流の指導者、日本一の施設設備、そして近郷近在から集まってくる優秀な学生と三拍子揃った日本有数の美術系学校として全国に知られていました。卒業生の中から、日本を代表する優れた芸術家が多く輩出されています。
このような由緒ある地で、県内の中学生を対象とした美術・工芸コンクール優秀作品を一同に展示することは大変意義のあることであり、絵画、デザイン、彫刻、工芸の各部門の応募数も多く、作品内容も充実していることは主催者として誠に喜ばしいかぎりです。
おわりに、審査にあたられました先生方をはじめ、これまで生徒の指導に当たってこられました先生方及び4月から企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼申し上げます。
第22回青井中美展 青井大賞
「音響」
岡本 紗和 中田中学校3年
青井中美展審査評
絵画部門 大村雅章・池永雅邦・大門俊彦
応募数は昨年より減少し、176点(内入選63点)であった。中学生らしい感性で丁寧に描かれた作品が多かったが、全体的に小さな作品が目立った。大きな作品に積極的に挑戦すると、表現に対する想いがもっと伝わるように感じた。描きたいテーマをしっかりともって自分なりの表現を追求している作品を選出した。
富山県教育委員会教育長賞「記憶の中の風景『路地の階段』」 横井嘉人
階段の向こうに広がる空の色に照らされて、懐かしい記憶が蘇ってくる路地の景色である。色彩は多く使われていないが、豊かさを感じる色使いである。その瞬間の空気が伝わってきて、見る人が感情移入できる絵に仕上がっている。
最優秀賞「窓の外の世界」 山中 小桜
大きな画面にのびのびと描かれた植物や静物と窓の外に広がる世界。内と外の対比は、交差点を歩く人々を眺める視線を自然に誘導してくれる。素直で美しい色の表現や描き方もよい。
チューリップテレビ優秀賞「古城の風景」 森本 周
俯瞰的な構図で丁寧に描いた石垣、階段、遠景の青空などの構成がとても素晴らしい。無彩色に近い中央の色を挟んで、空と階段の色相を意識した配色が絵に力強さを与えている。
彫刻・工芸部門 竹田貞朗・般若保・佐伯高基
第22回中美展応募作品の彫刻・工芸部門では、作品は少なくなるが近代的感覚の中学生らしい作品、身近な材料を工夫して素晴らしく製作され、鑑賞者を引きつける作品が目立った
。又、夢物語らしい作品が多く表現されて力強さを感じた。
富山県知事賞「蟹」早川仙華
彫塑の基本をふまえ粘土での肉付けなどと蟹の観察で手、足、顔など良く見て表現され、材料の樹脂でのブロンズ風でとても力強くすばらしい作品だ。
優秀賞「フィにッシュ」小西彩華
アルミのパイプ材料を素材にしてつくられた魚に触れると動き、口にエサのついた針がひっかかり水の中で動いている様子が作品のリズム感を生み、立体の形と美しさが増して素晴らしい秀作である。
優良賞「浸食」齋藤良輝
材料は古い顕微鏡を利用して彫刻的に組み合わせ、全体がよく構成された力作である。
佳作「これからの手」南璃菜
手の骨組みやバランスなどよく観察され、現代感覚で中学生らしい夢がある。白と色のバランスも美しくリズム感があり心を引きつける作品だ。
デザイン部門 玉井晶夫・浦上樹・佐藤克己
将来、デザイン方面で活躍したいと考えている中学生が多くなってきている。
中美展デザイン部門の作品は、各部門の中で一番多い。また、1校より最高31点の出展をした中学校もあり、デザインに対する人気度の高まりを感じる。
ただ、出品した内容を見ると女子生徒が圧倒的に多く、今年のデザイン部門入賞者は全て女子であった。男子は丁寧さや、作品の大きさに難があり、指導者の細かな配慮が望まれる。
その中でひときわ目を引いた大作があった。青井大賞に輝いた「音響」の岡本紗和さんの作品。
水を音楽的に表現させ、水柱の強弱で、大きな響きを創りだしている。水という素材は描くのは大変難しいが、よく観察した上で巧みで緻密な表現で描き、それが大小の融合によって様々な響きあうリズム感あふれる秀作であった。
「パズルワードクロス」の小西鈴奈さんや、
「波間の太陽」の山田舞さんはいずれも規格いっぱいの大きさで、細かな色調が巧みでアイデアもすばらしい。
その他、コンピュータグラフィックスの作品などもあり、今後は画面の大きさと新しい技法を取り入れた作品の出品に期待したい。
第22回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 「蟹」 高陵中学校 早川仙華 |
富山県教育委員会教育長賞 『記憶の中の風景「路地の階段」』 津沢中学校 横井嘉人 |
最優秀賞 「窓の外の世界」 小杉中学校 山中小桜 |
優秀賞 「フィにッシュ」 津沢中学校 小西彩華 |
富山新聞社優秀賞 「パズルワードクロス」 庄川中学校 小西鈴奈 |
チューリップテレビ優秀賞 「古城の風景」 福岡中学校 森本周 |