2013年11月14日(木)~12月1日(日)
富山県立高岡工芸高等学校長 松井 裕敏
このたび、第20回青井中美展を実施しましたところ、県内44校の中学校や特別支援学校から613点の応募がありました。絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から優れた作品26点を表彰し、青井記念館美術館に展示いたしました。若い感性で、見る者に伝える強いメッセージとパワーを感じる秀作がそろっていました。
さて、この青井中美展は本校創立100周年記念授業で、青井記念館が現在地に新築移転となった機会に発足したもので、県内の中学生を対象に美術工芸作品コンクールを開催して、若き中学生の創作意欲を促し、絵画・工芸に親しむ機会を設け、さらに郷土の芸術家にも関心を抱いてもらおうと企画されたものです。
本校は明治27年に「富山県工芸学校」として、若き美術家・工芸士の養成学校として開校されました。創校当時の学校は、一流の指導者、日本一の施設設備、そして近郷近在から集まってくる優秀な学生と三拍子揃った日本有数の美術系学校として全国に知られていました。卒業生の中から、日本を代表する優れた芸術家が多く輩出されています。
このような由緒ある地で、県内の中学生を対象とした美術・工芸コンクール優秀作品を一同展示することは大変意義のあることであり、絵画、デザイン、彫刻、工芸の各部門の応募数も多く、作品内容も充実している事は主催者として誠に喜ばしいかぎりです。
おわりに、審査にあたられました先生方をはじめ、これまで生徒の指導に当たってこられました先生方及び、4月から企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼申し上げます。
第20回青井中美展 青井大賞
「最後の一振り」
荒谷 野乃香 新湊南部中学校3年
青井中美展審査評
絵画部門 佐野 正人・大村 雅章・大門 俊彦
応募数は昨年よりも増え、一昨年に迫る285点(内入選141点)であった。また、若干ではあるが大きな作品も増え、時間をかけて制作したことが分かる作品ばかりであった。ただ、構図や作品の大きさ、表現方法等を工夫すれば更に良くなる作品も多く、しっかり額装されていない作品もあったのは残念だった。今後、指導者の方々にはマットの幅や色、額縁の取り扱い等にも気を配っていただけたらと思う。
富山県知事賞「響」 脇本一咲 トランペットを吹く女子生徒の眼差しが印象的な作品であり、空気の澄んだ感じとともに、素直に対象に向き合った作者の思いが感じられる。特に、肌の色や衣服の陰影、金属の質感の表現に優れ、3年間のたゆまない努力が分かる作品であった。
優秀賞「コイ」 藤永遥登 地元庄川に住んでいるコイであろうか。元気欲飛び跳ねているコイを画面一杯に描かれており、迫力がある。色彩豊かで模様化されたウロコの表現が楽しく美しい。
富山新聞社優良賞「森をぬけると・・・」 舟戸葵 抑制された色彩の中にも強さを感じ、色の変化が美しい作品である。スクラッチの技法を用いた緻密な表現の中に、作者のナイーヴな心情が読み取れる。
彫刻部門 竹田 貞郎・般若 保・佐伯 高基
20回展の中美展彫刻・工芸の部門で今年は出品数が少ないようだったが、質はとても向上しているが、工芸作品は少ないようだった。彫刻には、中学生らしい力強さ・若さが感じる大作が目立った。工芸での伝統的技法の利用作品もあった。また、現代の新しい素材を使った作品が多くあり、新しさも感じた。
青井大賞「最後の一振り」荒谷 野乃香 発泡スチロールを素材にして、人体をこつこつと接着剤で貼りつけた作品。部分だけでなく全体のバランス、動き、リズムなどを表現し、鑑賞する人の心を惹きつける力強い力作である。
最優秀賞「電子ーラ・カンスⅡ」西 航大 魚の中に電子材料が入り、新しい感覚で精密な機械と魚が調和して話しかけてくるようだ。着色も彫塑のブロンズのように深味を持ち素晴らしい作品である。
優秀賞「信念を持って」川嶋 航平 頭部を表現した作品で、友達の心の中まで粘土の持つ土のやわらかさを「手でつくる温かさ・美しさ」が彫刻の基本をふまえ、小さな作品だが色彩も素晴らしい秀作である。
デザイン部門 玉井 晶夫・山本 實・佐藤 克己
過去数年のデザイン部門の応募数の推移を見ると、増加状況であったが、残念ながら今年は去年よりも応募作品が少なかった。しかし、今回は学校単位で審査された様子が伺えることや、授業中で仕上げられる習作の出品が減ったのだろうか、完成度の高い作品が多く見受けられ、いずれの作品も中学生らしい丁寧さや素直な心で描かれてあった。
教育長賞「生命力」波多野世唯さんの作品は、画面の構成力は良く、上品な淡い色調で大きな画面ながら良くまとめられている。ただやわらかくなりすぎて、題名「生命力」のイメージに少し乏しく、デザイン部門ではトップながら、その上の大きな賞を逃してしまった。
富山新聞社優秀賞「永遠儀」齋藤夢加さんの作品。一見雑な感じを受けたが近寄って見ると、ぼかしと思える部分などは、実に細かくグラデーションで創り上げてある大作。ただ、円を使った構成にもっとメリハリをつけてあげればデザイン性の高い作品となり、まだ上位にいけたと考える。
コラージュとは言えなかったが、写真の組み合わせの作品もあった。また絵画部門の中で、絵画作品というより、デザイン的な傾向の強いイラストレーションの作品などがあった。コンピュータグラフィックなど、新時代に合わせて新しい技法をとり入れた作品も今後期待したい。
第20回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 |
富山県教育委員会教育長賞 |
最優秀賞 |
優秀賞 |
富山新聞社優秀賞 |
チューリップテレビ優秀賞 |