【青井記念館美術館】第30回青井中美展

第30回青井中美展

2023年11月17日(金)― 12月3日(日)

第30回青井中美展の開催にあたって

富山県立高岡工芸高等学校 校長 髙久 直樹

 このたび、第30回という節目の開催を迎えます青井中美術展(中学生美術展)に、県内39校の中学校から466点もの応募をいただきました。絵画・彫刻・工芸・デザインの分野から、若い感性の秀作作品250点が入選・入賞し、青井記念館美術館に展示いたしました。この青井中美展は、本校創立100周年を記念して始まったもので、今年で30回を数える歴史を有しております。中学生諸君からの作品一つ一つは、第一線でご活躍の作家・デザイナーの各先生に鑑審査をいただいております。

 入選・入賞された皆様には心よりお祝いを申し上げますとともに、出品された中学生の皆様には、本美術展を契機としてより一層創作意欲を高め、作品制作の励みとしていただければ幸いです。

 さて、本校は明治27年に「富山県工芸学校」という名の、若き美術家・工芸士の養成学校として開校され、日本有数の美術系学校として全国に知られていました。

 卒業生の中からも、芸術院会員や重要無形文化財保持者(人間国宝)など日本を代表する優れた芸術家が多く輩出されております。

 このような由緒ある地で、県内の中学生を対象とした美術展を開催し、優秀作品を一堂に展示することは大変意義があり、絵画・彫刻・工芸・デザインの各部門の応募数も多く、作品内容も充実していることは主催者として誠に喜ばしい限りです。

 終わりに、審査に当たられました先生方をはじめ、これまで生徒の指導に当たってこられました先生方、並びに企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼を申し上げます。

 


 

第30回青井中美展 青井大賞

 

 

「15の奏」

新湊中学校3年 河田 さくら子 

 


 

青 井 中 美 展 審 査 評

絵 画 部 門

  藤田 みゆき・大村 雅章・城石 和良

  絵画部門の応募数は248点、入選数は120点であった。全体的にレベルが高く、主題を基に感性や想像力を働かせ、モチーフや構図、色彩等を工夫した独創的な作品が多いと感じた。今後は、制作意図が伝わるような題名を心がけるとともに、作品の魅力がより伝わるよう、適切な総額を施して出品願いたい。

青井大賞「15の奏」 河田 さくら子

 作品からあふれ出る世界観に圧倒される。豊かな想像力を土台に緻密に計算された画面は、動きやリズム、演奏の楽しさや喜びを感じさせる。水面に映った少女の優しい笑みも、絵に吸い込まれる要因である。高い技術力で全てのものに命を吹き込んだ力作である。

最優秀賞「買い物」 高森 優亜 

 食材のみずみずしさが際立った作品である。まるで実際に手に取れるような錯覚を覚える。画面をはみ出した構図からは、買い物を終えた満足感も伝わってくる。質感や立体感、透明感等、豊かな色彩で細部まで丁寧に描く高い描写力が絵に力強さもたらしている。

優良賞「夢想」 松本 朱音

 不思議な世界を表現できる絵画の面白さがここにある。正確なデッサン、微妙な色彩変化がすばらしい。静の段階と動の金魚、対比も心地よい。金魚のぷっくりとした愛らしさもうまく表現しており、こちらを向いている右下の金魚に心奪われる。

 


 

彫 刻 ・ 工 芸 部 門

  小原 治五右衛門 ・ 枡田 篤史

 彫刻・工芸部門には、あわせて114点の応募があり、入選数は70点である。応募数は昨年度より少し多いものの、例年通りの応募数である。用いられる素材は多岐ににわたり、金属や粘土など従来から用いられているものから、廃工業製品の使用なども目を引いた。立体造形後、塗装を行っている作品が多く、より美しく仕上げたいという思いが伝わってくる。

富山県教育委員会教育長「暗闇の中の光」 北川 楓生

 様々な角度から作品を鑑賞することで、「水たまりに落ちる紅葉」「木漏れ日」など、視点を変えて見ることができる視覚的な美しさがある。工芸の染織における独創的な技術を生かした秀作である。

富山新聞社優秀賞「穴の中」 吉田 朱理

 カボチャの中にいる翡翠色の目をしたネコが、穴から左手を少し出してたたずんでいる。その左手にはカボチャの断片が付いている。そうか、カボチャに穴をほじって中に入ったのか。見る者の想像をかき立てる細かな仕事が随所にしてある秀作である。

富山新聞社優良賞「ストリングアート」 田川 琴音

 シンメトリーの幾何学紋様であり、工芸のデザインとして取り入れ馴染みやすい。糸と釘を使って色使いや構図のバランスを考えて、正確な仕事で2つの表現をうまくまとめている。工芸の中でも截金を彷彿させ、今後の展開を期待させる作品である。


 

デ ザ イ ン 部 門

  玉井 晶夫 ・ 本野 佳司子

  104点の応募、60点の入選となった今回は、観る側に「制作の目的」を強く教えてくれている作品が多かったように感じる。立体的な表現、素材の組み合わせ方、タイトルへの配慮など、様々な工夫が凝らされていた。作品が伝えてくるメッセージから、自然と作者の想いを想像してしまう。声が聞こえる訳ではないが賑やかな審査となった。

富山県知事賞「僕の経歴」 小原 好稀

 自身を端的に表す数字、書の力強さ、白と黒のコントラストに潔さを感じる。作品全体をまとめる構成力は申し分ない。心の中に溢れそうなテニスボール。静の中に詰め込まれた思いはどんなものか、秘めた強さを感じる作品である。

優秀賞「旅人」 二上 凜 

 画面の隅々、奥行きまで余すことなく想像のフィールドとした、一冊の物語を読んでいるような作品。複数の場所・時間が凝縮されているようだが、幻想的な光がその全てをまとめあげ、観る人の心を躍らせる。

チューリップテレビ優秀賞「百鬼夜行」 木戸 匠我

 恐ろしい異形の群れのはずが、なぜか愛らしく感じてしまうのは、作者の生み出したものに対する愛情からだろうか。一体一体の設定は説得力のあるレベル。タッチの丁寧さや描き込みが、線画特有の訴求力を高めている。

 


 

第30回青井中美展 入賞作品​

富山県知事賞

「僕の経歴」

城端中学校3年 小原 好稀 

富山県教育委員会教育長賞

「暗闇の中の光」

城端中学校2年 北川 楓生

 

 

 

 

 

   

最優秀賞

「買い物」

高陵中学校3年 高森  優亜

優秀賞

「旅人」

大門中学校3年 二上 凜

 

 

 

 

   

富山新聞社優秀賞

「穴の中」

大門中学校3年 吉田 朱理

チューリップテレビ優秀賞

「百鬼夜行」

大門中学校3年 木戸 匠我

 

 

 

 

 

 


 

 

審査会

11月2日(木) 尚美会館

 

 

 

表彰式

11月17日(金) 尚美会館 15:00~

 

 

 

講評会

11月17日(金) 青井記念館美術館 15:55~