第27回青井中美展
2020年11月12日(木)― 11月29日(日)
第27回青井中美展の開催にあたって
富山県立高岡工芸高等学校 校長 篠原俊一郎
このたび、第27回青井中学生美術展(青井中美展)を開催しましたところ、県内37校の中学校から452点もの応募をいただきました。今年も、絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から、若い感性の秀作作品275点が入選・入賞し、青井記念館美術館に展示いたしました。
この青井中美展は、本校創立100周年を記念して始まったもので、以来、四半世紀を超える歴史を有しております。中学生諸君からの作品一つ一つは、第一線でご活躍の作家・デザイナーの各先生に鑑審査をいただいております。
入選・入賞された方には心よりお祝いを申し上げますとともに、出品された中学生の皆様には、本美術展を契機としてより一層創作意欲を高め、作品制作の励みとしていただければ幸いです。
さて、本校は明治27年に「富山県工芸学校」として、若き美術家・工芸士の養成学校として開校され、日本有数の美術系学校として全国に知られていました。
卒業生の中からも、芸術院会員や重要無形文化財保持者(人間国宝)など日本を代表する優れた芸術家が多く輩出されています。
このような由緒ある地で、県内の中学生を対象とした美術展を開催し、優秀作品を一堂に展示することは大変意義があり、絵画、デザイン、彫刻、工芸の各部門の応募数も多く、作品内容も充実していることは主催者として誠に喜ばしいかぎりです。
おわりに、審査にあたられました先生方をはじめ、これまで生徒の指導に当たってこられました先生方、並びに企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼申し上げます。
第27回青井中美展 青井大賞
「まねっこ」
城端中学校3年 長谷川 奈 央
青 井 中 美 展 審 査 評
絵 画 部 門
杉山直孝・大村雅章・上杉靖吾
絵画部門には例年より多い242点の出品があり、内108点を入選とした。構図や色彩を工夫し丁寧に描かれた作品が多く、特に、モチーフを通した作者の訴求性が強く感じられる作品を入賞とした。2年生の作品も何点か含まれ、来年への期待も大きく高まる。今年は大きな作品や油彩画が少なかったので、今後是非チャレンジしてほしい。
青井大賞「まねっこ」 長谷川 奈央
兄妹のかわいらしい動きをその時間軸上の一点でとらえ、素直な目で描いた作品である。構図、色彩力いずれも完成度の高い作品である。子ども特有の肌の柔らかさや髪の質感等を高い技術で表現するだけでなく、対象の純粋さや素直さなど、心の内面までをしっかり表現している。
チューリップテレビ優秀賞「12月24日」 本江 澪奈
12月14日のタイトルにもあるクリスマスイブを題材にした心象を描いている。デザイン的な画調で描かれ、賑やかで楽しい感じのする静物画である。構図の工夫、細部にわたるペンのタッチ、赤と緑のイメージカラーを生かしながらの多彩な色遣いはレベルが高い。
優良賞「斑」 岡崎 将太
大胆な構図と緻密で多彩な線による表現、さらにその線をいかした彩色による質感の表現など、高い技術が感じられる自画像である。今後は、背景処理の工夫が絵全体に与える効果を研究するなど、より高みを目指してほしい。
富山新聞社優良賞「見えない脅威」 浅井 琉玖
見えない世界をあえて形と色で表現し不穏な雰囲気を醸し出した、独特な世界観を感じることのできる油彩画である。シンプルなモチーフに実に多彩な色で描かれた作品は、高い訴求力のある心象表現となっている。
彫 刻 ・ 工 芸 部 門
般若 保 ・ 鈴木甲一郎
今回の応募点数は101点で例年より少なかったが、うち入選作の82点は、規格いっぱいの大きさで、時間をかけて制作された、挑戦的で中学生ならではの若い感性の創造力豊かな作品が見られた。素材はダンボール、木片、発泡スチロール、針金等身近なものを使っての作品が多くなり歓迎できるが、伝統的な技法、材料を使っての作品が少ないのが気になった。既製品の部材を細工して、加飾したものがあったが、胸像などの人型部分については作者が制作しているのか既製品の利用なのか区別がつきにくかった。
富山県知事賞「空を見に」 渡邉 楽
自然に出来た木版の変化を巧みに利用し、大きな山に見たて、皆が協力し合って頂上を目指す物語が感じられる力強く若さのあるすばらしい作品である。
富山県教育委員会教育長賞「踏み明く」 篭 雅姫
身近なダンボール素材で生々とした動物の顔は角、耳、目、鼻、口がよく観察されバランスも良い。見る者をひきつけるすばらしい作品である。
優秀賞「耽る」 雨宮 理美
彫塑の基本であるバランス、顔の表情も良く、見る者をひきつける素直な作品である。
デ ザ イ ン 部 門
玉井晶夫 ・ 佐藤克己
今年のデザイン部門の出品数は109点、入賞は85点であった。1校より21点もデザイン部門へ出品した中学校もあり、デザインに対する人気や意欲の高まりを感じる。デザイン部門の上位の作品は最大のB1規格で、丁寧に描かれてあり、これらの作品が評価を受けた。小品のため上位に採用されなかった作品もあり、残念である。
最優秀賞「千紫万紅」 中村 千穂
千紫万紅(せんしばんこう)という、広大な庭園に池と鯉を中心に、色とりどりに華やかで様々な形容で緻密にデザイン化したことが見るものに伝わる。独自の感性で時間をかけて取り組んだ姿勢が素晴らしい。
富山新聞社優秀賞「コスモス」 丹羽 みずき
コスモスはギリシャ語のKOSMOS「宇宙」を意味する。宇宙の広がりを身近な星をちりばめながら、細かに表現されている。そこに漂う人にも宇宙の光を浴びて映り込む姿を描くなど、全体的に彩度をおさえた宇宙観に、センスを感じる。
第27回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 「空を見に」 五位中学校2年 渡邉 楽 |
富山県教育委員会教育長賞 「踏み明く」 志貴野中学校2年 篭 雅姫 |
最優秀賞 「千紫万紅」 大門中学校3年 中村 千穂 |
優秀賞 「耽る」 戸出中学校3年 雨宮 理美 |
富山新聞社優秀賞 「コスモス」 小杉中学校3年 丹羽 みずき |
チューリップテレビ優秀賞 「12月14日」 芳野中学校2年 本江 澪奈 |
審査会
10月31日(土) 尚美会館
表彰式
11月12日(木) 尚美会館 15:00~
講評会
11月12日(木) 青井記念館美術館 15:55~