2008年11月19日~12月7日
富山県立高岡工芸高等学校長 林 恵彰
このたび、第15回青井中美展コンクールを実施しましたところ、県内54校から767点の応募がありました。絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から優れた作品26点を表彰し、入選作品と共に本校の青井記念館美術館に展示いたしました。若い感性で、ただ上手に創作するだけでなく、見る者に伝える強いメッセージとパワーを感じる秀作がそろっており、審査員を喜ばせました。
さて、この青井中美展コンクールは本校100周年記念事業で、青井美術館が現在地に新築移転となった機会に発足したもので、県下の中学生を対象に、美術工芸作品コンクールを開催して、若き中学生の創作意欲を促し、絵画・工芸に親しむ機会を設け、さらに郷土の芸術家にも関心を抱いてもらおうとしたものです。
本校は明治27年に「富山県工芸学校」として、若き美術家・工芸士の養成学校として開校されました。創校当時の学校は、一流の指導者、日本一の施設設備、そして近郷近在から集まってくる優秀な学生と三拍子揃った日本有数の美術系学校として全国に知られていました。卒業生の中から、日本を代表する芸術家が多く輩出されています。
このような由緒ある地で、県下の中学生対象の美術・工芸コンクール優秀作品を一堂に展示することは大変意義のあることであり、絵画、デザイン、彫刻、工芸の各部門の応募数も多く、作品内容も充実していることは主催者として誠に喜ばしいかぎりです。
おわりに、これまで生徒の指導にあたってこられました中学校の先生方及び4月から企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼申し上げます。
第15回青井中美展 青井大賞
「思い出」
村本佳菜 高陵中学校3年
青井中美展審査評
絵画部門
頭川 徹・本保由喜美・大門俊彦
この部門は出品点数316点、内入選は147点で入選率46.5%であった。全体的に今回は少品が多く大作が少ないのが残念であった。しかし、テーマと表現の多様性に新鮮さが感じられ、中学生らしい素直な目で描かれているところが印象的であった。今回受賞したのは中でも完成度の高い作品である。
青井大賞「思い出」村本佳菜。バランスのとれた構図、テーブルクロスのストライプとクラリネットの細密な描写が巧みである。楽器への想いが見る者にさわやかに伝わり、やや平面性をもたせた作品のまとめ方にも新鮮な感性が感じられる。 富山新聞社優秀賞「私の瑞龍寺」萩野咲希。重厚な画面、単純化された形態に童画を想わせる魅力がある。空の赤、仁王像の表現が個性的で力強い作品に仕上げている。
優良賞「樹」高橋花歩。昼と夜、四季の変化を一本の樹木を通して描いた点がデザイン的であり、独創的に優れ幻想的な雰囲気をよく表現している。
その他、特に目に留まった作品としては、佳作の「母の背中」加治志生吏。台所に立つ母親の後ろ姿に親への感謝の気持ちが巧みな構図で表現されている。同賞の「友達」氷見実与。ポーズと表情で友人の内面までを感じさせる作品となっている。
彫刻・工芸部門
竹田 貞郎・六家 敬吉・佐伯 高基
「ものづくり」の研修などで伝統的な工芸作品が増えると思っていたが、残念ながら例年より応募作品が少なかった。しかし、中学生の若い力で新しい現代の素材や感覚での作品も多く、エネルギーが感じられた。
県知事賞「不可思議」有澤悠。作品も大きく、若さがみなぎり現代の素材である発砲スチロールを中心に他の材料とうまく調和させて構成され、動きや量感など彫刻の基本をふまえた非常にすばらしい作品である。
優秀賞「感情」村中ひとみ。作品は小さいが石のもつ自然の形を基に横顔を中心にして3つの顔をひとつの石で表現。大理石の美しさを生かしながら、人間の顔を自由にデフォルメし楽しく表現されている。手をふれてみたい作品である。
優良賞「夏」谷川千絵。工芸作品で伝統の金工鍛金の技術を生かしてトンボが宇宙で飛び廻って遊ぶ姿を表現。空間を動かすような若さあふれる作品である。
富山新聞社優良賞「つながり」渡辺愛梨。2つの手と玉が彫塑の要素であるリズム・動きに加え、肉付けもよく見て表現されている。2つの手で玉と遊ぶ様子が空間と調和し、動きも力強く構成された秀作である。
デザイン部門
玉井 晶夫・城宝 清司・太田 広信
過去2年の応募数の推移をみると18・19年は微増であり、本年は大幅に増加した。デザイン部門への出品は、県下中学校全般に参加する傾向があり、1校から15点以上出品した8校など意欲的な取り組みが見られる。
教育長賞「心の万華鏡」の延對寺彩香さんの作品は、技術的に秀れ完成度も高く大賞候補でした。ただ、淡い色調が上品で柔らかくまとまり過ぎたためか訴求性が弱いように感じられました。昨年の14回展で出品され優良賞を受賞された作品も技術的に秀れ驚きましたが、本年更に進歩されており将来楽しみです。
最優秀賞「途」森薫里さんの作品は、線の構成と色彩の組み合わせから遠近感と立体感を効果的に表現し、視線が中心へ吸い込まれながら又浮き出す不思議な作品です。 チューリップテレビ優秀賞「きれいな映像を」の村井彩乃さんの作品は、テレビの画面から浮き出た花、リボンや言葉を超写実的な表現で描いています。確かな描写力、色彩も鮮やかさがあり強烈で迫力があります。レタリングも漢字、ひら仮名とも整然として安定感があり、基礎デザインから一歩上級レベルの作品です。
全体的には中学生らしく素直に表現された作品が多く好感が持てました。中には段ボールなど立体的に組み合わせた意欲的な作品もあり、今後更に工夫され、より独創的な作品作りを目指してほしいと思います。
第15回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 |
富山県教育委員会教育長賞 |
最優秀賞 |
優秀賞 |
富山新聞社優秀賞 |
チューリップテレビ優秀賞 |