2007年11月21日~12月6日
富山県立高岡工芸高等学校長 林 恵彰
このたび、第14回青井中美展コンクールを実施しましたところ、県内56校から708点の応募がありました。絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から優れた作品27点を表彰し、本校の青井記念館美術館に展示いたしました。若い感性で、ただ上手に創作するだけでなく、見る者に伝える強いメッセージとパワーを感じる秀作がそろっており、審査員を喜ばせました。
さて、この青井中美展は本校100周年記念事業で、青井美術館が現在地に新築移転となった機会に発足したもので、県下の中学生を対象に、美術工作品コンクールを開催して、若き中学生の創作意欲を促し、絵画・工芸に親しむ機会を設け、さらに郷土の芸術家にも関心を抱いてもらおうとしたものです。
本校は明治27年に、「富山県工芸学校」として、若き美術家・工芸士の養成学校として開校されました。創校当時の学校は、一流の指導者、日本一の施設設備、そして近郷近在から集まってくる優秀な学生と三拍子揃った日本有数の美術系学校として全国に知られていました。卒業生の中から、日本を代表する芸術家が多く輩出されています。
このような由緒ある地で、県下中学生対象の美術・工芸コンクール優秀作品を一堂に展示する事は大変意義のあることであり、絵画・デザイン・彫刻・工芸の各部門の応募数も多く、作品内容も充実していることは主催者として誠に喜ばしいかぎりです。
おわりに、これまで生徒の指導にあたってこられました中学校の先生方、4月から企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼申し上げます。
第14回青井中美展 青井大賞
「Always」
森 薫里 出町中学校2年
青井中美展審査評
絵画部門
頭川 徹・熊谷正克・大門俊彦
初めに最高賞の青井大賞が絵画部門から選ばれたことに、審査員の一人として大変喜ばしいかぎりである。
今回は大作が思っていたより少なく、しかも油彩より水彩が多く見うけられたが、どの作品も構図や色彩などうまくまとめており、中学生らしい素直な目でしっかりと描かれている。中には中学生が描いたとは思えない完成度の高い作品が何点かあった。特に青井大賞の「Always」森 薫里さんの作品は絵の道具を大きくとらえた構成と明るい色彩がずばぬけており、見る人にさわやかに訴えてくる傑作である。
次に優秀賞の「笑顔」高田望さんの作品は、妹と弟であろう二人のほのぼのとした内面までが感じられ、やさしく心あたたまる感性で生き生きと描きあげた秀作である。
優良賞「ミキ」森川千扇さんの作品は、小作品であるが楽器を吹く顔の表現やしなやかな指の動きを繊細に捉え、音楽が聞こえてくるようで、元気に吹いてくるさまが逆にユーモラスにまで見えてくる成功した作品である。
彫刻・工芸部門
立川 善治・竹田 貞郎・佐伯 高基
中美展も第14回になり、応募される作品も彫刻・工芸部門では、小中学校で「ものづくり」の研修など技術的にも深く進んでいると感じた。伝統的な工芸品としての技術が生かされた鍛金パネルや蝋型鋳造銅器、染色スカーフなども出品された。
教育長賞[彫刻] 藤田智幸「Akihiro’s face」
彫塑の基本をふまえバランス、リズム、動きなど粘土での肉付けなど立体感・材料の扱いの美しさなどがよく表現され、調和のあるすばらしい作品である。粘土を手で取り扱った作者の感触が、完成された作品に暖かく残り、見る人に快く伝わってくる。
最優秀賞[工芸] 柴田和希「大粒の涙」
工芸品のもつ用即美の生活の中で、いつも使用されるとは限らないレリーフ作品であるが、土を焼いた形と背景の色彩の調和がとても深く関連し、美しく表現されている。なぜ大粒の涙が出たのか、作者の気持ちと心が見る人に伝わり、必然と対話が生まれている。
富山新聞社優秀賞[彫刻] 宝性さやか「Shirt」
作品はやわらかい粘土を利用して、シャツ布の質感をとてもよく写実的に表現している。布と粘土と作者の手との動きが感じられ、気持ちよさをかんじる秀作である。
富山新聞社優良賞[彫刻] 高田 恵「河」
彫刻の材料として段ボールを利用し、素材を生かした河の流れや細い線で上に伸びて宇宙観を立体的に表現し、空間の動きなどが材料に感情表現され、構成がすばらしい。
デザイン部門
玉井 晶夫・城宝 清司・太田 広信
本年度の出品点数は247点応募があり、基礎デザインをテーマとした作品から、B1パネルの大作にイラストレーションやポスターを描いた力作などもあり、中学生のデザインに対する関心と創作意欲の高さを感じさせ、入選・落選の審査で難しさを感じました。入選作品は112点で全体の約1/2の厳選となりました。
デザイン部門で最高賞は富山県知事賞となった「くじゃく」の作品でした。力強い太目の線で構成された中に、色鮮やかに孔雀を表現し、又大胆で優れた作品です。「空の城」の作品は、地上の建物と空中の線が程よく調和し、城の入り口から出た虹が手前に伸びて拡がる空間を感じさせ、全体にハーフトーンの配色ながら上品で魅力的な作品となりました。その他ポスター作品では、要点を絞り簡潔な構成と文字の組み合わせの優れたものや、イラストレーションには高度な技法を使って繊細な筆致で書かれた作品、更に基礎デザイン手法を使った力作などを中心に入賞されました。
全体的にレベルが高く、中学生の興味・関心の高さが感じられ今後より一層、作品づくりに取り組まれるよう願っています。
第14回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 |
富山県教育委員会教育長賞 |
最優秀賞
|
優秀賞 |
富山新聞社優秀賞 |
チューリップテレビ優秀賞 |