2006年11月22日~12月7日
富山県立高岡工芸高等学校長 林 恵彰
このたび、第13回青井中美展コンクールを実施しましたところ、県内57中学校から746点の応募がありました。絵画、デザイン、彫刻、工芸の分野から優れた作品26点を表彰し、美術館に展示いたしました。若い感性で、ただ上手に創作するだけでなく、見る者に伝える強いメッセージとパワーを感じる秀作がそろっており、審査員を喜ばせました。
さて、この青井中美展コンクールは本校100周年記念事業で、青井記念館が現在地に新築移転となった機会に発足したもので、県下の中学生を対象に、美術工芸作品コンクールを開催して、若き中学生の創作意欲を促し、絵画・工芸に親しむ機会を設け、さらに郷土の芸術家にも関心を抱いてもらおうとしたものです。
本校には、本県の貴重な財産でもある、富山県工芸学校時代の由緒ある作品、芸術家を目指した若き日の作品、あるいは大成して寄贈された芸術作品が沢山収蔵されています。
本校は明治27年に「富山県工芸学校」として、若き美術家・工芸士の養成学校として開校されました。創校当時の学校は、一流の指導者、日本一の施設設備、そして近郷近在から集まってくる優秀な学生と三拍子揃った日本有数の美術系学校として全国に知られていました。卒業生の中から、日本を代表する優れた芸術家が多く輩出されています。
このような由緒ある地で、県下の中学生対象の美術・工芸コンクール優秀作品を一同に展示することは大変意義のあることであり、絵画・デザイン・彫刻・工芸の各部門の応募数を多く、作品内容も充実していることは主催者として誠に喜ばしいかぎりです。
おわりに、これまで生徒のご指導に当たってこられました中学校の先生方及び4月から企画運営にご尽力いただきました関係の皆様に厚くお礼申し上げます。
第13回青井中美展 青井大賞
「足跡」
中仙道 史恵 城端中学校3年
青井中美展審査評
絵画部門
鶴谷 登・熊谷正克・大門俊彦
例年に比べると、油彩を中心として大作が増え、技術的にも優れたものが目立った。テーマも日常生活を描いたもの、空想の世界を描いたもの、抽象表現など偏りのない多様なテーマであった。全体的に中学生らしい地道な努力と工夫が感じられ、好感の持てる作品が多かった。
県教育委員会教育長賞「練習風景」井野涼さんの作品は、放課後の部活動に励む人物の姿が力強く、的確に描いている。中学生としては描写力に優れ、絵の具の扱いにも慣れている。
最優秀賞「春を待つ」犀川友絵さんの作品は、透視図法的な大胆な構成、筆のタッチによる画面の流れの表現、垢抜けした色彩がよく、作者の意気込みが感じられる。
チューリップテレビ優秀賞「夕日にのびる影」上野成穂さんの作品は、ありふれた日常の風景を奇抜な画面構成で描き、畳の細部の根気強い描写と、畳に映った人影の表現の巧みさが目を引いた。
彫刻・工芸部門
大角 勲・竹田 貞郎・佐伯 高基
「四角の革命」
吉田 勝年 |
現代社会との結びつきとサイエンスを凝縮し、量として捕え、時空を明快に表現した作である。並はずれた感性がうかがわれ将来が楽しみである。 |
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「あっ、ついちゃった」
草嶋 大貴 |
シューズを造型したこの作品は、ただ時空の証として、実現するのみで無くそこに自然の摂理をプラスした所にユーモアが有り、作者の意図が明快に表現された秀作である。 |
「楽楽」
中村 莉乃 |
陶の作品で、二次元の面の表現を上手く三次元にあしらい、そこに人間の内面を愛らしく造型表現した秀作である。 |
「ほほえみ」 松澤 綾乃 |
塑像の首の作品は、量的な内なる生命力を力強く表現し、表情豊かに感じ取れる秀作である。 |
デザイン部門
上野 博之・太田 広信
今年はデザイン部門から、青井大賞が選抜されました。学生展にもコンピュータソフトを使用した、類型的な表現が見られる時代状況になってきていますが、中学生らしくみずみずしい成果の表れでしょう。基礎構成作品が上位に少なかったのが惜しまれます。
青井大賞の「足跡」中仙道史絵さん:空を見上げているのは作者自身だろうか。少女の希望と不安、移ろいを重層的に描いている。交差する大小の足跡が、時間の流れを象徴しているようだ。
優秀賞の「楽園海」杉本麗奈さん:絵本のメルヘン世界のような宮殿に群れ遊ぶ魚、海草、珊瑚そしてクジラは、カラフルで海中クリスマスパーティのようだ。丹念に描かれたイラストはどれも素直でほほえましい。
優良賞の「チーター」早川由希子さん:暗色のバックと対比して描かれた俊速でしなやかなチーターは特徴を良くとらえ、まだら模様はコンピュータのドットのように、手書きで緻密に表現している。
第13回青井中美展 入賞作品
富山県知事賞 |
富山県教育委員会教育長賞 |
最優秀賞
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優秀賞 |
富山新聞社優秀賞 |
チューリップテレビ優秀賞 |